林銑十郎は、昭和初期の政治と軍事を象徴する重要な人物です。軍人としての輝かしいキャリアを持ちながら、内閣総理大臣としては短命に終わり、「食い逃げ解散」という批判的な言葉とともに歴史に名を残しました。本記事では、林銑十郎の生涯や内閣の特徴、そして「食い逃げ解散」の背景や意義について詳しく解説します。彼の人生を振り返り、現代の政治への教訓を探ります。
林銑十郎の生涯
【参考】
国立国会図書館「林銑十郎」
Wikipedia – 林銑十郎
生い立ちと軍人としてのキャリア
林銑十郎（はやし せんじゅうろう）は、1876年（明治9年）に石川県で生まれました。幼少期から成績優秀で、陸軍士官学校を卒業し、軍人としての道を歩み始めました。
日露戦争では、前線での活躍が評価され、陸軍内で着実に昇進しました。彼の軍歴は戦前日本の軍事力強化と密接に関連しています。
柳条湖事件、そして満州事変での中心的な役割
1931年、関東軍（陸軍の一部）の石原莞爾が中心となって柳条湖事件が引き起こされました。
若槻礼次郎内閣は不拡大方針を表明したものの、前線にいた林銑十郎中将は独断越境し、戦線を拡大。満州事変へと発展させ、愛新覚羅溥儀を初代皇帝として満州国を建国しました。
このことから、林銑十郎は当時、「越境将軍」として世間で人気を博しました。
若槻礼次郎や満州事変、そして関東軍については以下の記事で詳しく解説しています。
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陸軍大将への道のり
林は、軍の中核となる役職を歴任し、1932年に陸軍大将に昇進しました。
特に、彼の指導力と戦略的思考は陸軍内で多くの同僚や部下から評価されていました。この昇進は、後の政治家としての活動にも影響を与える重要な出来事です。
まとめ
- 1876年（明治9年）、石川県で生まれる。幼少期から成績優秀。
- 陸軍士官学校を卒業後、日露戦争で活躍し、着実に昇進。
- 1932年、陸軍大将に昇進。軍人としてのキャリアが政治家活動の基盤となる。
政治家としての歩み
陸軍大臣としての役割
林銑十郎は1934年、陸軍大臣に就任しました。
彼は軍部の権威（特に軍部大臣現役武官制）を背景に、国防政策や軍事費の拡充を推進しました。軍人としての実績が、政治家としての立場を強化する一方、軍部の発言力が増すきっかけともなりました。
なお、軍部大臣現役武官制については以下の記事で詳しく解説しています。
軍部大臣現役武官制とは？制度の復活と廃止の背景、広田弘毅・山本権兵衛・山縣有朋の関与を詳しく解説
内閣総理大臣への就任とその背景
1937年、二・二六事件などで国内の政治情勢が不安定化する中、林銑十郎は内閣総理大臣に就任しました。
彼の就任は、軍部と政治のバランスを取るための苦肉の策とされています。しかし、軍部寄りの姿勢が強く、議会内での支持は限定的でした。
二・二六事件については以下の記事で詳しく解説しています。
二・二六事件の真相と影響: 日本政治を揺るがした皇道派・青年将校の反乱はなぜ起きたのか
まとめ
- 1934年、陸軍大臣に就任し、軍備拡充を推進。
- 1937年、政治混乱の中で内閣総理大臣に就任。軍部の影響を背景にした政治運営が特徴。
- 議会での支持が弱く、政権運営に苦戦する。
林銑十郎内閣の概要
林銑十郎は1937年に第33代内閣総理大臣に任命されました。しかし、わずか123日で退任。「何もせんじゅうろう内閣」と揶揄されました。
内閣成立の経緯
林内閣は、二・二六事件で退任した広田内閣の後に、政治の混乱を収めるために成立しました。
軍部エリートとしての評価は高かった一方、議会での支持基盤が弱く、短命に終わりました。
彼が軍部寄りの政策を重視したことが、議会からの反発を招いた要因の一つです。
なお、広田弘毅については以下の記事で詳しく解説しています。
広田弘毅とは？内閣総理大臣としての功績、東京裁判での裁かれた理由、軍部大臣現役武官制の復活まで徹底解説
政策と施策の特徴
林銑十郎内閣は、軍備増強や戦時体制の準備を進めました。しかし、議会との対立が激化し、内閣の施策が実質的な成果を上げることは困難でした。
まとめ
- 1937年、混乱する国内情勢を収める目的で内閣が成立。
- 内閣の政策は軍備増強や戦時体制の準備が中心。
- 議会との対立が激化し、短命内閣となる。
林銑十郎の「食い逃げ解散」とは？
解散の経緯と背景
林内閣は、1937年に議会での行き詰まりを理由に衆議院を解散しました。これが「食い逃げ解散」と呼ばれるものです。
当時の林銑十郎は、議会での議論を十分に行わず、一方的に解散を決断しました。
「食い逃げ解散」と呼ばれる理由
「食い逃げ解散」という表現は、内閣が自らの責任を果たさず、逃げるように解散をしたことを批判的に表した言葉です。この解散は、政治家としての林銑十郎に対する評価を大きく左右しました。
なぜ食い逃げ解散をしたのか
首相就任後の国会会期末、林内閣は突如衆議院を解散しました。予算案がすべて可決された後の解散だったため、政治的にはあまり意味はなかったようですが、本人としては議会からの反発に相当ストレスをためての決断だったと言われています。
参考：エキサイト – 悪名高い「食い逃げ解散」はなぜ行われた？林銑十郎首相の歴史的暴挙の背景
まとめ
- 1937年、衆議院を解散。議会での議論を避けた形での決定。
- 「食い逃げ解散」という呼称は、責任を果たさずに解散したとの批判から。
- この解散が林銑十郎の評価を大きく左右した。
内閣総辞職とその後
総選挙の結果と内閣総辞職
解散後の総選挙では、林内閣の支持が得られず、内閣は総辞職に追い込まれました。この結果、林銑十郎は短命内閣の象徴的存在となりました。
辞職後の活動と晩年
辞職後、林銑十郎は政治の第一線から退きました。戦後の彼は軍人や政治家としてのキャリアを振り返りながら晩年を過ごしました。
まとめ
- 総選挙の結果、林内閣は議会の支持を失い総辞職。
- 辞職後は政治の第一線から退き、晩年を静かに過ごす。
- 軍人としてのキャリアとは対照的に、政治家としての評価は厳しいものが多い。
林銑十郎の遺産と評価
参考：鳥取大学研究成果リポジトリ「日本ファシズム体育思想の研究」
政治・軍事における功績
林銑十郎の功績は、軍人としてのリーダーシップや戦略的思考にあります。一方で、政治家としての成果は限定的で、批判も多いです。
現代から見た評価と影響
林銑十郎は、戦前の軍部と政治の関係を象徴する人物として評価されています。「食い逃げ解散」の教訓は、現代の政治にも通じる重要なテーマです。
まとめ
- 軍人としての功績は、戦略的思考とリーダーシップにより高く評価される。
- 政治家としては短命政権や「食い逃げ解散」により批判も多い。
- 昭和初期の軍と政治の関係を象徴する人物として歴史的意義がある。
まとめ
林銑十郎の生涯は、軍事と政治の緊密な関係が特徴だった昭和初期を理解する上で重要な事例です。
軍人としての輝かしい経歴と対照的に、政治家としての評価は議論の余地が多いです。「食い逃げ解散」として批判された内閣運営は、政治家としての責任の重さを再認識させます。
彼の歴史的役割を理解することは、現代政治を考えるうえでも意義深いものとなるでしょう。
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