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参議院の定数の変遷:参議院の人数が変化してきた経緯とその目的を解説します

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参議院の定数(議員の総数)の変化には、日本の政治状況や選挙制度の改革が大きく影響を与えています。ここでは、参議院の定数がどのように変化してきたか、その主な経緯を解説します。

※関連記事:衆議院の解散はなぜやるのか?

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参議院の定数の変遷

演説をする立候補者

参議院の定数は、主に「1票の格差」や選挙制度の改革に伴って増減が繰り返されてきました。特に人口動態の変化や選挙区の公平性を確保するために、地域ごとの代表数の調整が行われてきました。

参議院の人数の変化について、設立時からたどっていきます(参議院 – 参議院議員選挙制度の変遷より)。

1947年:参議院の設立(250名)

参議院は、1947年5月3日に施行された日本国憲法のもとで新たに設立されました。発足当初の定数は250名(うち全国区100名、地方区150名)でした。

当初は、衆議院とのバランスを取るため、長期的視野で国政を議論する場として位置づけられていました。

1970年:定数増加(252名)

1970年の参議院選挙制度の改正により、定数は250名から252名に増加しました。沖縄県の日本返還に向けた準備の一環でした。

沖縄県選出の議員が2名とされたので、それ以前の250名+2名=252名となりました。

2000年:定数増減(242名)

2000年には、参議院の定数は242名へと減少しました。

次のように削減されています。

  • 比例代表選出議員:100人→96人
  • 選挙区選出議員:152人→146人

2013年の参議院総選挙から変更になりました。

ただし、参議院は3年ごとに半数改選なので、2013年と2016年の2回の選挙で順次定数削減が行われました

2018年:定数増加(248名)

2018年には定数が増加し、248名になりました。この年以前に、2006年、2012年、2015年にそれぞれ選挙区の定数増減が繰り返されていました。「1票の格差」を縮小し、地域ごとの代表性をより反映するための措置でした。

以下のような定数区割りになりました。

  • 比例代表選出議員:96人→100人
  • 選挙区選出議員:146人→148人

定数是正は1票の格差是正のため

前述のように、参議院の定数はたびたび変更されました。合計の人数が同じでも3年ごとに選挙区ごとの定数見直しがなされています。これは、1票の格差を是正するためです。

都道府県ごとの議席数一覧(選挙区)

参考:総務省 – 参議院選挙区選出議員の選挙区及び定数の改正等について

都道府県議席数
北海道6
青森2
秋田2
岩手2
山形2
福島2
宮城2
茨城4
栃木2
群馬2
東京12
埼玉6
千葉6
神奈川8
新潟2
長野2
岐阜2
富山2
石川2
福井2
山梨2
静岡4
愛知8
滋賀2
三重2
京都4
奈良2
大阪8
和歌山2
兵庫6
島根・鳥取2
岡山2
広島4
山口2
香川2
愛媛2
徳島・高知2
福岡6
大分2
佐賀2
宮崎2
熊本2
鹿児島2
長崎2
沖縄2
合計148
総務省 – 参議院選挙区選出議員の選挙区及び定数の改正等についてをもとに作成

比例代表と選挙区の議席配分

  • 選挙区:各都道府県ごとの人口規模に応じて議席を配分。
    • 都道府県ごとに設定され、改正が行われる際に「一票の格差」を考慮して調整が行われる。
  • 比例代表:全国を1つの選挙区として、政党ごとの得票数に応じて議席を配分。
    • 有権者は、政党名か候補者名を記入して投票します。

特定の都道府県が多い・少ない理由

  • 多い都道府県の理由
    • 東京や大阪などの都市部は人口が多く、選挙区の議席数も多くなります。人口が議席配分の基準となるため、都市部の優遇が見られます。
  • 少ない都道府県の理由
    • 鳥取県や島根県のように人口が少ない県では、議席数も少なく設定されています。これを補うために「合区」という仕組みが導入され、隣接する県を1つの選挙区として扱うケースもあります。
  • 合区の問題
    • 合区(例:鳥取県と島根県)は「地域代表性が損なわれる」と批判されることも多いです。一方で、人口が少ない地域で議席を配分しすぎると「一票の格差」が大きくなるため、議論が続いています。

1票の格差とは

集団で訴えを起こす人たち

一票の格差は、同じ国会議員を選ぶ選挙で、人口の多い選挙区の有権者の一票が、人口の少ない選挙区の一票に比べて価値が小さくなることを指します。

例えば、人口の多い都市部の有権者が1人の議員を選ぶために数十万人の票が必要な一方、人口の少ない地域では数万人の票で議員を選ぶことができる場合、その「一票」の価値が違うことになります。

参考:「一票の格差」の問題点とは? – 横浜市立大学

1票の格差の具体例

1票の格差とは、たとえば以下のようなケースです。

  • A選挙区:有権者数が50万人
  • B選挙区:有権者数が10万人

この場合、どちらの選挙区でも同じ「1人」の議員を選出するならば、A選挙区の一票の価値はB選挙区の一票の5分の1となります。

つまり、A選挙区の有権者の一票はB選挙区の有権者の一票よりもはるかに「軽く」なってしまうのです。これが一票の格差の問題です。

一票の格差について、最高裁の違憲状態判決などを以下の記事でくわしく解説しています。
1票の格差とは:これまでの問題点や最高裁による違憲判決の推移、解決策を解説

参議院と他国の上院との比較

日本は衆議院と参議院の二院制を採用しています。二院制は上院と下院に分かれるシステムで、参議院はそのうち上院にあたります。

ここでは、他国の二院制と日本の参議院の特徴を比較します。

アメリカの上院との比較

定数: アメリカの上院は、各州から2名ずつ選出され、定数は100名です(50州 × 2名)。

選出方法: アメリカ上院は、各州で2名選ばれるため、人口に関係なく州の代表が平等に確保されます。これは、小規模州でも大規模州と同じ代表権を持つことを意味します。

特徴: アメリカ上院は州の代表性を強調しており、州間の平等を重視した構成です。このため、人口が少ない州でも、カリフォルニアのような人口の多い州と同等の影響力を持っています。この設計は、連邦制を強調するために意図的に作られました。

イギリスの上院との比較

定数: イギリスの上院(貴族院)の定数は流動的で、約800人ですが、選挙ではなく任命によって構成されます。世襲貴族、終身貴族、聖職者などから成り立っています。

選出方法: 上院議員は選挙で選ばれるのではなく、政府や君主による任命や世襲でその地位を得ます。これは、立法府の議論をより幅広い経験や知識を基に行うための仕組みとされています。

特徴: イギリスの上院は主に審議機能に重点を置き、下院が主導する立法案の修正や見直しを行います。選挙で選ばれないという点で、民主主義とは異なる形のアプローチを取っており、日本の参議院とは大きく異なります。

ドイツの上院との比較

定数: ドイツの上院(連邦参議院)の定数は69名で、16の州から州政府によって選ばれた代表が派遣されます。

選出方法: ドイツの上院議員は、各州の政府の代表者であり、選挙で直接選ばれるわけではありません。各州の人口に応じて、3~6議席が配分されます。

特徴: ドイツ上院は、各州政府の代表者から成るため、州政府の意向を国政に反映させる役割を持っています。連邦制の一部として、州ごとの利益を守るための機関であり、地域代表を目的とする日本の参議院に近い役割を果たしていますが、選出方法は異なります。

フランスの上院との比較

定数: フランスの上院の定数は348名です。

選出方法: フランス上院は、直接選挙ではなく、地域代表の選挙人団によって選出されます。選挙人団は、地方議員や市長などの地方政治家が主な構成員です。

特徴: 地域の代表性を重視しつつも、選挙人団を通じた間接選挙の形態を取る点で、日本の参議院と異なります。日本の参議院は直接選挙で選ばれ、比例代表と選挙区制が併用されていますが、フランス上院は地域の利害調整機能を強調しています。

日本の参議院の特徴

定数: 日本の参議院の定数は248名です。

選出方法: 参議院は、選挙区選出議員と比例代表選出議員の二つの方式で選ばれます。選挙区選出議員は、都道府県ごとの選挙区で選ばれ、比例代表選出議員は政党ごとの得票に応じて配分されます。これは、地域代表と全国的な政党支持のバランスを取るためです。

特徴: 日本の参議院は、選挙を通じて国民の意思を反映させる上で、アメリカやドイツのように各地域の代表性を強調しつつ、フランスやイギリスのように完全な二院制でもなく、選挙区と比例代表の組み合わせにより、全国的な政治の安定性と地域代表性のバランスを取っています。

比較から見える日本の参議院の特徴

地域代表と全国代表のバランス: 日本の参議院は選挙区と比例代表の組み合わせで、地域代表性と全国的な視点を併せ持つ点が特徴です。これは、アメリカのように州ごとの平等代表ではなく、都市と地方の人口比に応じた代表を確保しつつ、全国的な政党支持を反映させています。

選出の多様性

イギリスやフランスの上院のように間接選挙や任命ではなく、直接選挙で選ばれる点で、より民主的な要素が強いのが日本の参議院です。

安定性の確保を担う

衆議院に比べて、参議院の議員任期は6年と長く、解散がないため、政治の安定性を保つ役割を果たしています。これはアメリカ上院やフランス上院と共通する要素です。

まとめ

参議院の定数は、主に「1票の格差」や選挙制度の改革に伴って増減が繰り返されてきました。特に人口動態の変化や選挙区の公平性を確保するために、地域ごとの代表数の調整が行われてきました。

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